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2025.12.9
不動産豆知識
安藤

賃貸オフィスの敷金・保証金の相場は? 交渉のポイントも解説!

賃貸オフィスを借りる際、多くの企業が悩むのが「敷金・保証金はいくら必要なのか」という点です。住居とは異なり、事務所物件では敷金が高額になりやすく、さらに保証金や償却といった独自のルールが設けられている場合もあります。これらを正しく理解していないと、初期費用が予想以上に膨らんだり、退去時の返還金でトラブルが生じたりすることも少なくありません。


本記事では、敷金と保証金の違い、相場の目安、償却や返還の仕組み、そして交渉のポイントまで分かりやすく解説します。これからオフィス移転や新規開設を検討している企業が、安心して契約判断できるよう基礎知識をまとめました。


この記事で分かること

● 敷金・保証金の違いと、なぜオフィスで初期費用が高くなるのか

● 賃貸オフィスの敷金・保証金相場の目安と地域ごとの差

● 償却・原状回復・返還額の仕組み、そして交渉を進めるためのポイント


賃貸オフィスの敷金・保証金とは?


オフィスを借りる際にまず確認すべき項目の一つが、契約時に必要となる「敷金」と「保証金」です。いずれも初期費用の中でも大きな割合を占めるため、金額の根拠や使われ方を理解していないと、想定以上の出費につながることもあります。特に事業用物件では住居とは異なる慣習があるため、違いを把握しておくことが重要です。


ここでは、まず敷金と保証金の役割や仕組みを分かりやすく解説します。


敷金とは?


敷金とは、オフィスを借りる際にオーナーへ預ける「担保金」のことです。主に、賃料の滞納や退去時の原状回復費用に充てられる目的で設定されており、実際に問題がなければ解約時に返還されます。


一般的な住居の賃貸契約でも用いられる概念ですが、オフィスの場合は面積が広く設備も多いため、原状回復の費用が大きくなりやすく、その分敷金も高額になる傾向があります。企業の信用度やオフィスの立地によって必要額が変わる点も特徴です。 


保証金とは?


保証金は、主に事務所や店舗などの事業用物件で用いられる「預託金」のことで、敷金と同じく賃料の滞納や契約違反に備えるための資金です。


ただし敷金と異なり、保証金には「償却」という仕組みが設けられていることが多く、契約時に預け入れた一部が返還されずにオーナーの収入となります。 


両者の違い


敷金と保証金はいずれも「オフィス入居時に預ける担保金」である点は共通していますが、最も大きな違いは償却の有無です。


敷金: 原則として全額返還される(ただし滞納や原状回復があれば差し引き)

保証金: 契約時に定められた金額が償却され、返ってこない部分が発生しやすい


また、住居物件で使われるのは主に敷金であるのに対し、事業用物件では保証金が使われるケースも多く、地域やビルによって慣習が異なる場合もあります。


企業にとっては、どこまでが返還される金額なのか、どこからが実質的な初期費用にあたるのかを理解しておくことが、契約条件を比較する上で非常に重要です。


賃貸オフィスで高額な初期費用がかかる理由


賃貸オフィスでは、住居よりも初期費用が高額になりやすい傾向があります。最大の理由は、オフィスという性質上、原状回復費用や設備維持にかかるコストが大きいためです。床や壁、空調、電気設備など、業務利用により損耗しやすい箇所が多く、万が一の修繕費に備える必要があります。そのためオーナーは一定の担保を確保する目的で、敷金や保証金を高めに設定するケースが一般的です。


また、企業の倒産リスクや賃料滞納リスクが住居より大きい点も影響します。オフィスの賃料は住まいに比べて高額なため、万が一滞納が発生した場合の損失も大きくなります。オーナーとしては、賃料の数カ月分を担保として保有しておくことで、リスクを軽減しようとする傾向があります。


さらに、大規模ビルでは建物グレードの維持や設備投資の費用も反映されます。エレベーターや空調システム、セキュリティ設備などのメンテナンスコストは継続的に発生し、これらを安定して運営するために初期費用を高めに設定している物件も少なくありません。


このように、賃貸オフィスの初期費用が高額になる背景には、オーナーが負うリスクの大きさと、設備投資・保守コストの高さが密接に関係しています。


賃貸オフィスの敷金・保証金の相場


賃貸オフィスの敷金・保証金の相場は、立地やビルグレード、貸主の方針によって大きく変動しますが、一般的には賃料の3〜12カ月分が目安とされています。特に東京都心部のような人気エリアや、グレードの高い大型オフィスビルでは、リスク管理や原状回復費用を見込んで10カ月分以上を求められるケースも珍しくありません。一方、地方都市や小規模ビルでは3〜6カ月分程度に抑えられることもあります。


また、事務所物件では保証金の形式が採用されるケースが多く、この場合は契約時に預けた金額の一部を返還しない償却が発生する場合もあります。償却分は実質的な初期費用となるため、同じ敷金・保証金の金額であっても、返ってくる金額の割合が物件によって大きく異なる点に注意が必要です。


さらに、スタートアップ支援やテナント確保のために、敷金を低めに設定したり、保証金の分割払いに対応したりする物件も増えています。入居しやすさを重視したビルほど敷金・保証金を抑える傾向があるため、企業の資金計画に合わせて選択肢を検討することが重要です。


賃貸オフィスにおける敷金の償却とは?


賃貸オフィスの契約書を確認すると、敷金とは別に償却という項目が記載されていることがあります。住居ではあまり見慣れない項目のため、初めてオフィスを借りる企業にとってはイメージしづらいかもしれません。しかし、この償却は返ってこない敷金に関わる重要な項目で、初期費用の総額や退去時の返還金に大きく影響します。


ここでは、まず償却がどういう仕組みなのか、その基本から分かりやすく解説します。


償却の仕組み


敷金の償却とは、契約時に預けた敷金の一部を、退去時に返還せずオーナーが収入として受け取る仕組みのことです。住居ではあまり見られませんが、事務所や店舗などの事業用物件では一般的に採用されています。償却は、原状回復費用とは別に、あらかじめ返ってこない部分として契約書に明記されており、例えば「敷金10カ月、償却2カ月」の場合、退去時にどれだけ室内がきれいでも2カ月分は戻りません。


これはオーナーが空室リスクやテナント募集コスト、契約管理費などをカバーする目的で設定されるものです。企業側にとっては実質的な初期費用となるため、契約前にどの部分が償却され、いくら戻るのか、返還条件がどうなっているかを必ず確認することが重要です。


原状回復費用との違い


償却と原状回復費用は混同されがちですが、性質は大きく異なります。償却は「あらかじめ返還しないと決められている金額」であり、室内の使用状況とは無関係に発生します。一方で原状回復費用は、契約期間中の損耗や改装による変更点を元の状態へ戻すために必要な実費であり、利用状況や破損の程度によって変動します。


つまり償却は契約時点で金額が確定している固定費用、原状回復は実費精算が基本という違いがあります。オーナーとしては、テナント入れ替え時に発生する募集活動や管理の手間など、賃貸経営上のコストをカバーするために償却を設定します。企業側は、償却と原状回復を合わせた退去時の総負担を把握しておくことで、移転や解約の費用を事前に計画しやすくなります。


賃貸オフィスの敷金・保証金は交渉できる?



敷金・保証金は「決まっているものだから変えられない」と思われがちですが、実は物件や状況によっては調整の余地があります。特に賃貸オフィスでは、オーナー側の空室状況や入居希望企業の信用度によって条件が変わるケースも多く、交渉の仕方次第で初期費用を抑えられる可能性があります。


ここでは、敷金・保証金を交渉する際に押さえておきたいポイントを順番に解説します。


交渉のタイミング


敷金・保証金の交渉の成否はタイミングに大きく左右されます。最も適しているのは、内覧後に条件面のすり合わせを行う段階や、申込前後の入居意思を明確にしたタイミングです。オーナーとしても早い段階で入居の見込みが立つことはメリットがあるため、条件調整に応じやすくなります。


また、空室が長引く時期や市場の需要が低下しているタイミングは、交渉が成功しやすい傾向があります。一方、人気ビルや問い合わせが集中している物件では、交渉がほとんど通らないケースも少なくありません。提案する際は「入居時期を早める」「長期契約を検討する」など、オーナー側にもメリットのある要素を含めると柔軟に応じてもらいやすくなります。


オーナーから信頼を得られているか


敷金・保証金の交渉において非常に重要なのが、企業としての信用力をどれだけ示せるかという点です。オーナーは賃料滞納や途中解約のリスクを避けたいと考えているため、信頼できる企業ほど敷金・保証金の減額に応じやすくなります。具体的には、事業内容や財務状況が分かる会社概要、決算書、成長見込みなどを整理して提示すると効果的です。


また、過去の賃貸履歴がある場合は、滞納やトラブルがなかったことを伝えることも大きなアピールになります。反対に、新規設立の企業や財務基盤が弱い企業の場合は、担保として敷金や保証金を多めに求められる傾向があります。信用を示す資料はできるだけ早い段階で共有し、「この企業なら安心して貸せる」と思ってもらうことが、交渉成功の大きなポイントです。


フリーレントなど他の条件を提示


敷金や保証金の減額が難しい場合でも、フリーレント(一定期間の賃料無料)など、別の条件で交渉する方法があります。特にフリーレントは、オーナー側にとって空室期間を埋められるメリットがあるため比較的受け入れられやすく、初期費用を抑えたい企業にとっては有効な選択肢です。


また、長期契約を結ぶ代わりに敷金を減らしてもらうなど、複数の条件を組み合わせる形で交渉できることもあります。オーナーとしては収益性と安定運用を重視するため、一方的な減額要求ではなく、「この条件なら双方にとってメリットがある」という提案が有効です。交渉前に自社の優先事項を整理し、代替案をいくつか持っておくことで、より柔軟に条件調整を進められます。


まとめ


賃貸オフィスの敷金・保証金は、単なる「預け金」ではなく、オーナーが負うリスクや設備維持コスト、原状回復費用などを見越した重要な担保です。住居と異なり、敷金の償却や保証金の返還条件など、契約内容によって大きく条件が変わるため、契約前に内容をしっかり確認することが不可欠です。


相場は賃料の数か月分〜10か月以上になることもあるため、資金計画を立てる際には償却や原状回復費用も考慮に入れ、返還される見込み金額を見越して検討することが求められます。交渉余地がある場合もあるため、単に条件を鵜呑みにせず、オーナーと交渉する姿勢も重要です。


なお、オフィスの立地や広さ、用途に応じた条件設定は物件によって大きく異なります。大阪・京都・兵庫・東京などの都市部でオフィス物件を探すなら「オフィス賃貸の総合窓口」の利用がおすすめです。豊富な物件情報から、自社のニーズに合ったオフィスを見つけるサポートとなるはずです。

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