従来、オフィスのレイアウトは職種や業種を問わず、島のように配置するのが一般的でした。しかし近年は、より従業員一人ひとりに適した作業環境を求め、さまざまなレイアウトが登場しています。
そこで本記事では、オフィス移転時に知っておきたいオフィスレイアウトの変更によって期待できる効果やレイアウト・デスク運用スタイルの種類について詳しく解説します。
オフィスのレイアウト変更は、単に従業員が仕事をする場所の配置を変えるだけではなく、業務や従業員のモチベーション向上、会社のイメージアップなど、さまざまな効果が期待できます。
オフィスのレイアウトを見直すことで、職種や働き方に適した環境を整えられ、仕事がしやすくなります。その結果、生産性や業務効率の向上が期待できます。
例えば、ミーティングや商談が多い職種が仕事をするエリアには小さめの会議室を複数設置する、また従業員が個別に取り組む業務なら一人ひとりが集中して取り組める個室ブースを設置するなど、仕事内容に合ったレイアウトに変更すれば効率的に仕事に取り組めます。
社内コミュニケーションは業務を円滑に進めるためのポイントの一つです。オフィスのレイアウトは従業員同士のコミュニケーションに大きく関係します。動線が悪く、通路が狭くて移動しづらいレイアウトでは同じ部署内の決まった人だけとやり取りをする傾向があるため、他部署とのコミュニケーションが希薄になりがちです。
そこでオフィスのレイアウトを変更して動線を改善し、人の流れを意識した配置にすると、従業員同士でやり取りがしやすくなり、コミュニケーションを活性化する効果が得られます。従業員同士のコミュニケーションが活発で風通しの良いオフィスは業務もスムーズに進められる環境であるため、結果的に生産性アップにもつながります。
オフィスのレイアウト変更は、働く従業員だけではなく対外的にもメリットがあります。洗練されたレイアウトはオフィスを訪れた取引先や訪問者に良いイメージを残せるため、企業ブランディングやイメージアップが見込めます。
オフィスのレイアウトは、前述したようにコミュニケーションを活発化させるだけにとどまらず、働きやすい環境づくりにも貢献します。自社への良い印象を抱くことで、従業員のモチベーションやエンゲージメントが向上するので、定着率の向上や採用力強化も期待できるでしょう。
オフィスレイアウトには多くの種類がありますが、それぞれ作業効率や従業員同士のコミュニケーションの容易さなど異なる特徴やメリット・デメリットがあります。以下では、オフィスレイアウトの基本となる5種類のパターンをご紹介します。
島型レイアウトとは「対向型」や「対向島」とも呼ばれる、向かい合わせにしたデスクで島を作るレイアウトです。オフィスのレイアウトとしてポピュラーなパターンで、事務職や営業職といった部署やチーム単位で島を作るケースが多く見られます。一般的には、島の一方の端と通路を挟んだ場所、または島の一方の端と向かい合うように上長席を設置します。
島型レイアウトは同じ島の中でコミュニケーションを取りやすいので、活発に議論を交わせる環境を作れるのがメリットです。デスクをまとめているので電源の確保やケーブルの配線が容易で、席替えや増員時の対応がしやすくスペース効率が良い点も、島型レイアウトのメリットに挙げられます。
一方で、従業員が向かい合う配置なので周囲の目が気になりやすく、集中しにくい環境になること、通路スペースが必要な点がデメリットです。
背中合わせレイアウトは、文字通り他の従業員と背中を合わせるようにデスクを配置するレイアウトです。対面を避けて集中できる個人の作業スペースを確保できる上に、振り返れば向かい合わせになれるので、コミュニケーションも取りやすいのがメリットです。個人で集中して行う業務と複数名で取り掛かる業務が混在している部署やチームに向いています。
スペースに余裕があれば、デスク間にパーテーションで区切ったりテーブルなどを置いて軽いミーティングスペースを作ったりすることが可能です。しかし、コミュニケーションを取るには振り返る必要があるため対向型よりコミュニケーションが取りづらい環境になること、対向型と比較するとレイアウト効率が落ちる点がデメリットです。
同向型レイアウトはデスクを全て同じ方向に向けて設置する方法です。学校の教室やセミナールームなどで多く見られるレイアウトなので、「スクール式」と呼ばれることもあります。
全てのデスクが同じ方向を向いているので周囲の人と目が合うことがなく、集中できる環境を作れます。コールセンターや窓口業務などに向いているレイアウトで、講師が登壇する研修にも適したレイアウトです。
デメリットは、離れた席の人とコミュニケーションが取りにくくなることです。そのため、部署やチーム単位で取り組む業務にはあまり向いていません。
ブース型レイアウトは、デスクとデスクの間やデスクの正面をパネルやパーテーションで区切る方法です。一つずつデスクを区切られるので、周囲の視線や音を遮って影響を受けにくく集中しやすい環境が作れるのが大きなメリットです。一人で行う作業が多い専門職やクリエイティブ職に向いています。
周囲の目が気にならないメリットがある一方で、パネルやパーテーションで狭い空間に区切るため閉塞感が出やすいこと、周囲とコミュニケーションが取りにくい環境になることがデメリットです。またデスクに区切りを設置するためのコストがかかること、従業員の在席を目で見て確認しにくくなる点もブース型レイアウトのデメリットに挙げられます。
ブーメラン型レイアウトとは、ブーメランデスクという120度の角度が付いたデスクを3台使用し、3人で向かい合う一つの島を作る方法です。一人ひとりの作業スペースを広く取れるので、複数台のモニターを使用する業務に向いています。
デスクに角度が付いているので視線がぶつかることはありませんが、視線を向ければコミュニケーションを取れるので、集中できる環境を確保しつつも従業員とのコミュニケーションが求められる業種や企業に適したレイアウトです。
デメリットは、一般的なデスクよりも大きなブーメランデスクを使用するため広いスペースが必要で、スペース効率が悪くなることです。
オフィスのレイアウトに加えて、デスクの運用スタイルは従業員の職場環境や業務遂行に関わるポイントです。効率的に業務を進めるためには、以下でご紹介する4種類の運用スタイルを知っておきましょう。
固定席は、オフィスのデスク運用で一般的なスタイルです。従業員の数のデスクを準備し、一人ひとりに固定した座席を割り当てます。毎日同じ席で業務を行うので仕事に適した環境を作りやすく、使い慣れた備品や仕事に必要な書類などをデスクに常備できるメリットがあります。
一人で完結する業務や専門性の高い業務に向いていますが、組織変更などが生じた際にレイアウト変更をしにくくなる点がデメリットです。
フリーアドレスとは、固定席を設けずに毎日好きな席で業務を行うスタイルです。座席が固定されていないので隣にいる人が常に変わります。社内コミュニケーションの活発化を図る場合や、従業員一人ひとりの自律性を尊重する企業に向いています。また人数分のデスクを用意する必要がなくなるので、スペースを有効活用して狭い場所にオフィスを設ける際にも適した方法です。
フリーアドレスのデメリットは、席が固定されていないため毎日席を探す必要があること、荷物や備品を常備できないので個人で全て管理する必要があることです。
グループアドレスは、チームや部署などのグループ単位で座席を固定するスタイルです。チームや部署内での移動は自由ですが、座席の位置が一定の範囲で定められているので、フリーアドレスよりも座を確保しやすいメリットがあります。グループ内でのコミュニケーションが取りやすいことから、グループ単位で進める仕事や業種に適しています。
グループアドレスはグループ単位で座席が固定されるため、他グループとのコミュニケーションが取りにくくなる点がデメリットです。
ABWとは「Activity Based Working」の略で、業務内容やその日の気分などで自由に働く場所を選択できるスタイルです。働く場所はオフィスだけに限らず、カフェやコワーキングスペースなども選択肢に入ります。自由度を高めることで、従業員のモチベーションや生産性の向上が期待できます。
ABWではオフィス内に複数のレイアウトを設置して、集中したいときはブース、コミュニケーションを取りながら仕事を進めたいときはカウンター式の座席などが選択可能です。
一般的な固定席とは異なるスタイルなので、多様性を重視する働き方や最先端の働き方を導入したい企業に適していますが、自由度が高い分従業員にスタイルを浸透させるには時間がかかること、一般的なオフィスよりも導入コストがかかる点がデメリットです。
オフィスのレイアウトには一般的なパターン以外にも複数の種類があり、デスクの運用スタイルもさまざまです。それぞれ異なる特徴やメリット・デメリットがあるので、自社の業務内容や目的などに合わせて、適したレイアウトやデスク運用スタイルを導入することをおすすめします。
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