賃貸オフィスの移転は企業の成長に関わる重要なプロジェクトです。オフィス移転が成功すれば業務の効率化やビジネスチャンスの拡大に期待できます。賃貸オフィス選びを失敗しないためには、求める条件を明確にすることが大切です。本記事では、賃貸オフィスの選び方を流れに沿って解説します。
オフィスの老朽化や企業体制の変化でオフィスの移転を検討している場合、何から始めれば良いか分からないことがあるかもしれません。オフィスの移転は流れに沿って行えば、自社に適したオフィスをスムーズに見つけられます。
本記事では、賃貸オフィスの選び方を流れに沿って解説します。
オフィスは選び方次第で、従業員のやる気を高めたり、企業のブランドイメージを構築したり、ビジネスの成長に寄与したりする重要な要素になります。そのため賃貸オフィスを選ぶ際は、まずエリアや賃料、広さなどの基本的な条件の確認はもちろん、内見を重ねて自社に最適なオフィスを見つけることが大切です。
以下では、賃貸オフィスの失敗しない選び方について順を追って説明します。
賃貸オフィスを選ぶ際は、まず条件を決めることが大切です。条件を明確にして物件数を絞ることで効率的に物件探しを行えます。賃貸オフィスに求める条件は企業により異なりますが、一般的にオフィス選びの条件として挙げられる項目は以下の通りです。
● 立地
● 賃料
● 広さ
● セキュリティ
● 設備
各項目について解説します。
オフィスの立地は、企業のブランディングに影響を与える要素の一つです。オフィスの需要が高いエリアは賃料が高くなる傾向にありますが、利便性が高く人気のある場所にオフィスを構えれば、商談や採用活動を有利に進められるかもしれません。
また、交通の便が良く最寄りの駅から徒歩圏内のオフィスは、業務効率を高める効果に期待ができます。顧客がオフィスに来ることが多い場合は、駅からの距離だけでなく、オフィスが分かりやすい場所にあることも重要です。
さらに、立地の良いオフィスは従業員の通勤にかかる負担も軽減できます。交通手段は電車やバスだけでなく、自転車や自家用車も考えられるため、駐輪場や駐車場の有無の確認も重要です。
オフィスの賃料は、利便性が高く人気のあるエリアほど高く、郊外になるほど低くなる傾向にあります。来客が少ない業種や自家用車で出勤する従業員が多い職場、リモートワークが多く出社する従業員が少ない職場の場合は、郊外のオフィスも選択肢に入れると良いでしょう。
また、賃貸オフィスの場合、一般的に初期費用として敷金・保証金・礼金・共益費・火災保険料・仲介手数料などが必要です。敷金は賃料の12カ月分程度が一般的で、初期費用の合計は賃料の15倍程度になることもあります。賃料と利便性を考慮し、予算に合う賃料の物件を探しましょう。
オフィスの広さは事務所衛生基準規則により定められており、従業員一人当たりに必要な気積(床面積×高さ)は10㎥とされています(※)。
一般的なオフィスの天井の高さは2.6m程度のため、一人当たりに必要な床面積は次のように算出されます。
10㎥÷2.6m≒3.84㎡(約1.16坪)※受付や会議室等は除く
従って、従業員一人当たり1.16坪以上の広さが確保できるようなオフィスを選びましょう。来客が多い業種や大型の機器が必要な業種などでは、より広い面積が必要になる場合もあります。
※参照:中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター.「事務所衛生基準規則 第二章 事務室の環境管理(第二条-第十二条)」
https://www.jaish.gr.jp/anzen/hor/hombun/hor1-2/hor1-2-36-2-0.htm ,(参照2024-10-30).
賃貸オフィスは安全性確保のため、セキュリティ体制の整備が必要です。セキュリティシステムや防犯カメラの導入有無を確認しておきましょう。
賃貸オフィスに求められるものは企業により異なるため、必要な設備があるオフィスを選ぶことが大切です。オフィスを選ぶ際に確認したい代表的な設備は次の通りです。
● エレベーター
● メールボックス
● トイレ
● ゴミ集積所
● 空調設備
● 照明設備
● 駐車場・駐輪場
賃貸オフィスに求める条件を明確にしたら、それぞれの条件の優先順位を決めましょう。条件の優先順位を決める理由は、全ての条件を満たす物件に巡り合うことは難しいためです。
なお、優先順位を決める際は、事業の成長を見据えて数年先の状況まで想定して考えると良いでしょう。早期の引っ越しを避けるため、企業の将来性を考えて適切な広さや設備のオフィスを選ぶことが大切です。
不動産会社によって取り扱う物件・対応・仲介手数料などは異なります。より理想的なオフィスに出会うためには、いくつかの会社に問い合わせて比較するのがおすすめです。不動産会社を比較する際のポイントは次の通りです。
● 希望条件に合う物件を紹介してくれるか
● 物件の良いところだけでなく注意点も教えてくれるか
● 問い合わせたときにレスポンスは早いか
なお、賃貸オフィスを取り扱う主な不動産会社には、大手不動産会社と地元の不動産会社があります。大手の不動産会社は幅広いネットワークがあり、全国で多くの物件を取り扱うため、エリアが決まっていないときや異なるエリアの物件を比較したいときに向いています。
一方、地元の不動産会社は、特定のエリアの物件に強く、周辺の環境や治安など物件情報だけでは分からないことを教えてもらえるところが特徴です。地元の不動産会社は紹介できるエリアが絞られるため、希望のエリアが決まっているときに向いています。
不動産会社を選んだら、不動産会社に希望するオフィスの条件を伝え、条件に合う物件をいくつか紹介してもらいましょう。最初は条件全てに当てはまる物件を探し、見つからなければ優先順位の低い条件から順に外していきます。
条件に合う賃貸オフィスが見つかれば、内見を行います。内見は資料では分からない物件の詳細な情報を知るために必要です。内見の際は、オフィス内だけでなく共用スペースも確認しておきましょう。内見時にチェックしたいポイントは次の通りです。
● オフィスの広さや導線
● ビルの外観
● エントランスやエレベーター、トイレなど共用スペースの管理状況
● 空調設備の数と位置
● 電気容量
● セキュリティの状況
● 駐車場や駐輪場の広さや管理状況
● 他のテナント
共用スペースの広さや管理状況は、会社の第一印象になることがあります。従業員だけでなく来社したお客さまも利用するため、管理ができていなければ企業のイメージを下げる恐れがあります。
また、複数のテナントが入っているオフィスビルの場合は、他のテナントのチェックも重要です。入居するテナントの業種はビル全体の雰囲気に影響します。企業のイメージに合わないテナントが入居しているビルは、避けた方が無難です。
オフィスの周辺状況でチェックしたいポイントは次の通りです。
● 最寄り駅やバス停までの距離
● 治安
● 金融機関や郵便局の有無
● 飲食店やコンビニの有無
最寄り駅やバス停が徒歩圏内であれば、通勤や来客の負担を減らせます。また、治安が良いことは安心して働くために必要な条件です。犯罪発生状況は、警視庁の犯罪発生情報マップで確認できます(※)。
オフィスの近くに飲食店やコンビニがあればランチや休憩に利用でき、従業員のモチベーションアップにつながります。金融機関や郵便局はスムーズに業務を行うために必要です。
※参考: 警視庁.「犯罪発生情報マップ」. https://map.digipolice.jp/policy.html ,(参照2024-11-28).
条件に合うオフィスが見つかれば賃貸借契約の締結を行います。賃貸借契約書には入居中や、退去時の規則が記載されています。契約書の内容に抵触すると退去を求められる可能性もあるため、契約前に内容を理解しておくことが重要です。契約書に疑問や不明な箇所があれば、契約成立前に確認しておきましょう。
賃貸借契約書の主な記載事項は、下記が挙げられます。
l 使用目的
l 貸借期間
l 契約解除
l 禁止事項
l 原状回復義務
l 特約事項
l 保証金
l 契約金
l 賃料
l 支払方法
賃貸オフィスの場合、使用目的に制限があったり、契約解除事項や禁止事項を設けていたりするケースがあります。業務内容が該当しないかどうかを確認しておきましょう。長期的な契約を予定している場合は、今後の事業展開や変更なども視野に入れる必要があります。
入居期間、更新条件、解約に関する事項は物件により異なります。賃貸借契約書には更新料や解約予告期間、退去までの流れも記載されているため確認が必要です。特約事項は、借主と貸主が合意した特別な条件がある場合に設けられるものです。
また、賃貸オフィスは退去時に原状回復義務が発生します。原状回復の範囲や費用負担も賃貸借契約書に記載されているため、確認しておきましょう。
オフィスは単なる作業スペースではありません。自社にとってより良いオフィスを契約すれば、業務効率や従業員のモチベーションの向上、企業のブランディングにもつながります。オフィスに求める条件を明確にし、優先順位を立てた上で、複数の不動産会社に相談し、自社に最適な物件を見つけましょう。契約後のトラブルを防ぐために、契約前に契約書の内容を確認しておくことも大切です。
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